7月7日~七夕
7月になると、多くの介護施設では竹飾りが用意される。
色とりどりの模造紙を短冊形に切り、入居者にマジックペンとともに渡す。
何年も前から、文字を書くということさえできなくなった人には
「●●さん、もうすぐタナバタなんですけど、なんか願い事ありますかぁ?」
願いなんかある訳ない・・・
生きてることが分からなくなってるのに・・・
「おしっこしたい」
「家に帰りたい」
「ご飯まだ?」
「七夕ぁ?」
「長いことぉ?」
結局、適当に書くことになる。

扇風機の風に揺れる、たくさんの短冊の奥のほうに、今年もまた、隠れるように一枚の”願い事”が・・・
「早く死ねますように」
書き主は判っている、78歳のあの女性だ。
特に大きな身体的ハンデも無く、介護度は1。
3年前にたった一人の肉親の息子に先立たれ、この有料老人ホームにたどり着いた。
人と争うことなど、人生で一度もなかったような控えめな女性。
こういう人に限って、結構、いろんな”不幸”に襲われ、その度に悲しみと仲良くしてきたんだと思う。
全てを受け入れてきたから、悲しく生きるということも受け入れているんだろう。
だから、自分から”死”は作らない。

昼食後のコーヒーを飲みながら、テレビを見ていた。
テーブルには週刊ポストが開かれていた。
『122歳で亡くなった女性 介護者を気遣い120歳で禁煙していた』
「チョコレート」「赤ワイン」「タバコ」が大好きで、「我がまま」を貫き通し、かの有名な画家のゴッホにも見染められた、”アルルの美少女”だったそうだ。


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